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明確化するために、嘔吐者に関する結果も同時に示してある。脚注に示されているように、平均値は、全て無次元化量であり、変化の傾向とは相関係数を意味している。
表2.2.3−9あるいは図2.2.3−7からわかるように、変化の傾向が負となっているのは、?酔いの発症者、嘔吐者:白血球数(WBC);尿素窒素(BUN):血糖値(GLU):アドレナリン[A]
?非発症者:赤血球数(RBC),ヘモグロビン(Hb),ヘマトクリット(Ht);コレステロール(CHO),中性脂肪(TG);γ一GTP,GPT,ALP、総蛋白σP),アルブミン(ALB),ZTr;ノルアドレナリン[NA]
である。即ち、発症者、嘔吐者に関しては、これらの値が段々減ってくると酔いを発症し、嘔吐に至り、非発症者の場合には、徐々に上がっていく傾向が見られる。
WBCが急に減少することで、抵抗力は低下し、RBC,Hb,Ht等はこれに対抗するために次第に増加する。GPTやγ−GTP,ALP,TP,ALB,ZTT等も肝機能に負担をかけながら、同様に増加する。BUNは腎機能で、ストレスが最も影響を与えるところであるから、CREが代償する傾向が見られるのは当然と考えられる。
GLUが乗り物酔いで減少傾向を見ることは意外であるが、総じて発症者、嘔吐者が日常は健康であり、GLUの急な減少を動揺刺激を「非日常的な刺激」と受け止め、嘔吐することで「日常の健康状態」に戻ろうとする、と解釈することができる。
また、γ-GTP,GOT,GPTの値は上昇する傾向にあり、特にγ−GTP,GOTに顕著である。この傾向は肝機能の低下を意味するものであるが、GLUの低下と関係して興味深いところである。
一方、【A】が減少し、相対的に[NA]が増加することは、不安、緊張、恐怖、怒りの出現を意味する。
C)動揺刺激による遺伝的健康度の変化
動揺暴露実験の前後に採取された血液は、大阪大学医学部環境医学教室森本兼嚢教授の協力により行われた。この分析の目的は動揺刺激による遺伝的健康度の低下、生体の自然免疫機能の低下の調査である。具体的には次の2項目についての調査が行われた。
?健康破綻の進行を予測し得るバイオマーカーとして、ガン免疫機能の指標であるナチュラルキラー細胞活性(NK活性;Natural Killer細胞活性)、
?次世代への遺伝影響負荷量ならびにガン化のリスクとして抹消リンパ球における小核形成
午前中に行われた動揺暴露実験の被験者と、動揺暴露を受けず採血のみを行う対照被験者(Control)の血液を対象とした。これらの血液より、Ficoll-Paque比重遠沈法で単核細胞を分離し、Effector細胞として用いられた。Target細胞にはヒト慢性骨髄性白血病に由来する細胞株のK562が用いられた。NK細胞活性の測定には51Cr遊離法が用いられた。即ち、Effctor細胞と51Cr標識したTarget細胞を混合し、5%CO2, 37℃環境下で4時間培養した後、上清を採取し、上清中に遊離した51Crの放射活性がガンマーカウンターによって計測された。Effctor細胞とTarget細胞の比(ET比)は、5:1,10:1,20:1の3種類とした。
解析結果を図2.2.3−8,2.23−9に示す。図中のE/Tはガン細胞1個に対するNK細胞数を表す。また,動揺暴露は動揺暴露を受けた被験者、コントロールとは動揺暴露実験時に行われた比較対照となる被験者の分析結果である。
同一人に対しては、動揺暴露後のNK細胞活性は動揺暴露前に比べて、3種のF/T比ともに、活性

 

 

 

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